膵癌患者数は、増加の一途をたどっています。膵癌の年間死亡者数は2013年に30,000人を超え、2019年には36,356人まで増加しています。膵癌が最も予後不良な癌の1つで、2009~2011年に膵癌と診断された患者の5年相対生存率は8.5%でした。これは、対象となった癌の中で最も低い値でした。一方で、早期に診断された症例は長期予後が望めることが明らかになってきており、膵癌の予後改善のためにいかに早期診断できるかが重要な課題となっています。
2022年に刊行された「膵癌診療ガイドライン2022年版」における膵癌診断のアルゴリズムでも、膵癌を疑う臨床症状を有する、膵酵素(アミラーゼ)や腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)の上昇を認める場合とともに、膵癌のリスクファクターを複数有する場合は積極的に検査を行うことが推奨されています。
膵癌を臨床症状から早期発見することは困難であり、何かしらの自覚症状を有して受診する膵癌患者の多くは進行癌の状態です。自覚症状としては、腹痛、腰背部痛、黄疸、体重減少等が報告されています。
膵癌のリスクファクターとして、家族歴、糖尿病、肥満などの生活習慣病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞といった膵疾患、喫煙や大量飲酒の嗜好暦などが挙げられています。
腹痛、黄疸、腰背部痛、体重減少等の臨床症状を認める場合や糖尿病の新規発症、増悪の場合は膵癌の可能性を考慮し、検査を行うことが望ましいです。
膵癌の診断には、腹部超音波、造影CT、MRI、超音波内視鏡、内視鏡的膵管造影が用いられます。特に腹部超音波検査は外来診療や検診で簡便で侵襲のない安全な検査として有用であり、ファーストステップとして位置づけられています。超音波検査で腫瘤像、膵管拡張・狭窄、嚢胞、胆管拡張等を認めた場合は、CT、MRI、超音波内視鏡等の精密検査を行います。
膵癌の根治治療は外科的切除ですが、診断時に膵周囲の脈管(腹腔動脈、総肝動脈、上腸管膜動脈・静脈、門脈)浸潤や遠隔転移を生じている場合が多く、そのような症例に対しては化学療法(抗癌剤)や放射線療法などの集学的治療が行われます。
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